こどものお口のケガについて
Mouth Injuries

こどものお口のケガが増える時期
こどもの歯のケガ(歯が欠けた・折れた・抜けた)は、成長にともなって起こりやすい時期が異なります。そのため、それぞれの発達段階に応じて、リスクや原因を知っておくことが大切です。
また、転倒を繰り返すお子さまの場合は、足の発育に何らかの問題が隠れていることも考えられます。3歳児の約7割に「浮き指」などの兆候がみられるという報告もありますので、お子さまの歯の健康を守るためにも、足の状態に目を向けてみましょう。
1〜3歳頃(乳歯期)

歩き始めたばかりのこの時期は、まだ身体のバランスが安定していないため、転倒などによって前歯をぶつけることが多くなります。そのため乳歯がぐらついたり、折れたりするケガが起こりやすいです。
小学校低学年頃

行動範囲が広がり、遊具での遊びや友達とのふざけ合いなどが増えるこの時期は、歯をぶつけることが増えてきます。生えたばかりの永久歯は歯根がまだ未完成なため、外からの衝撃に弱く、折れてしまうことが多いです。
小学校中学年頃

運動量が増え、スポーツや活発な遊びでの衝突や転倒の衝撃が大きくなるこの時期は、特に前歯のケガが多くなります。安定してきた前歯の永久歯であっても大きな衝撃により、脱臼・破折・神経損傷などのケガが発生します。
お子さまがお口をケガしたときの対処と治療について
元気に遊んでいたお子さまが突然「歯をぶつけた」「歯が欠けた」といってきたら、保護者の方は驚かれることと思います。
そんなときに落ち着いて対応するためにも、ご家庭での応急処置と歯科医院での治療について知っておくことが大切です。
歯が欠けた・折れた場合

ご家庭での対処法
まずはお子さまのお口の中を確認し、出血している場合は清潔なガーゼなどで軽く押さえて止血します。欠けた歯の破片が見つけることができた場合は、乾燥しないように注意しながら保存してください。
おすすめの保存方法は以下のいずれかです。
- 歯牙保存液(薬局で購入可能)
- 牛乳(※アレルギーがある場合は使用不可)
- 生理食塩水

歯科医院での治療方法
ケガの状態によって治療法は異なりますが、基本的にはできるだけ早く歯科医院を受診することが大切です。見た目に大きな変化がなくても、歯の中や根の部分がダメージを受けている場合があります。
痛みの有無にかかわらず、少しでも異変を感じた場合はお早めにご相談ください。
- 小さな欠け(神経が露出していない場合)
欠けた部分を接着、または歯と同じ色のプラスチック素材(コンポジットレジン)で形を整えます。 - 大きく折れた場合(神経が見えている・出血している場合)
神経の一部を除去し、薬剤を貼付。その後、歯の形態を修復します。
歯がぐらぐらしている・位置がずれている場合
お子さまが転倒した直後、「歯がグラグラしている」「歯の位置がずれた気がする」というときは、歯の脱臼や埋入(歯が歯ぐきにめり込んだ状態)の可能性があります。

ご家庭での対処法
お子さまのお口の中をやさしく確認し、出血している場合は清潔なガーゼで止血します。
歯に触れたり、動かしたりせず、安静にすることが大切です。腫れや痛みの軽減目的で冷やす場合は、外側からやさしく行いましょう。
すでに乳歯の生え変わり時期で自然にグラついていた場合は、経過観察で問題ありません。しかし、大きく揺れていたり位置がずれている場合は、念のため歯科医院を受診することをおすすめします。

歯科医院での治療方法
歯がずれていたり脱臼している場合は、歯を正しい位置に戻したうえでワイヤーなどで隣の歯に固定します。
固定期間の目安は2週間〜2か月程度ですが、揺れの程度や歯の本数によって個人差があります。
治療期間中は、歯をなるべく安静にし、清潔に保つことが重要です。
歯が完全に抜けてしまった場合
強い衝撃により、歯が根元から抜けてしまう(完全脱臼)ことがあります。このような場合、条件が整えば歯を元の位置に戻せる(再植)可能性があります。

ご家庭での対処法
抜けた歯は、根元には触れずに乾燥させないよう注意しながら保存してください。牛乳・歯牙保存液・生理食塩水のいずれかに浸して持参することが理想的です。
※水道水で洗ったり、汚れをこすったりせず、そのまま保存してください。
歯根膜が生きているうちに処置することが大切です。できるだけ早く歯科医院に持ち込むことで、再植の成功率が高くなります。

歯科医院での治療方法
可能な場合は、抜けた歯を元の位置に戻す「再植」を行い、適切に固定します。また、歯の反応や根の状態を慎重に観察し、必要に応じて神経の処置や経過観察を行います。
治療の成否は受傷からの時間と保存状態に左右されるため、早めの受診が重要です。
迷ったときは、すぐに歯科医院へ
こどもの歯のケガは、外から見て問題ない場合でも、歯の内部や根の部分が損傷を受けていることがあります。
「様子を見ようかな」と迷ったときこそ、早めの受診が安心と回復への近道です。
転倒予防─「1年8組 足指教室」のご案内
お子さまの前歯のケガで来院される保護者の方は少なくありません。実は、よく転ぶお子さまの多くは、足の指が曲がっていたり、縮こまっていたりする傾向があります。
当院では、お口の中だけでなく、足指や姿勢のチェックにも力を入れています。足の指がしっかり開いて地面をとらえることができると、身体のバランスが整い、姿勢も安定して転びにくくなることが分かっています。また、姿勢はあごの発達やかみ合わせにも密接に関係するため、足から全身の健やかな成長を支えることが大切です。
「歯科で足指?」と驚かれるかもしれませんが、こどもの成長とケガ予防のために、ぜひ当院の1年8組 足指教室にご参加ください。
詳しくは受付またはスタッフまでお気軽にお尋ねください。

よくある質問
こどもが転んで歯が抜けてしまいました。どうすればよいですか?
抜けた歯を水道水でやさしく数秒間洗い、汚れを軽く落としてください(※根元の膜が失われる可能性があるため、洗い過ぎには注意すること)。その後、牛乳(アレルギーがない場合)・歯牙保存液・生理食塩水のいずれかに浸し、30分以内に歯科医院を受診してください。迅速な対応が歯の保存につながります。
前歯が欠けてしまいましたが、痛みがないようです。このまま放置でも大丈夫でしょうか?
痛みがなくても、折れた部分から細菌感染する可能性があります。また、欠けた歯が鋭利になっていて唇や舌を傷付けることもありますので、なるべく時間を置かずに、小児歯科を受診してください。
お口をぶつけて歯ぐきから出血しています。どうしたらいいですか?
出血や歯のぐらつき・ズレがある場合は、早めの歯科受診が回復に大きく影響します。必要に応じて、歯を元の位置に戻して固定することもあります。当院では、診療時間内であれば急患対応も可能ですので、まずはお電話にて状況をお伝えください。
スポーツ中のお口や歯のケガを予防する方法はありますか?
スポーツ時には「マウスガード」という装置で、歯やお口の中を衝撃から守ることができます。歯の破折や脱落を防ぐほか、脳震とうの予防や頭部の安定にも効果があるとされています。ケガで健康な歯を失わないためにも、ぜひご使用ください。
当院の成人担当・伊藤誠先生は、東京医科歯科大学付属歯科病院スポーツ歯科専攻の専門家です。
乳歯の裏から永久歯が生えてきました。このままで大丈夫ですか?
揺れている乳歯を長期間放置してしまうと、歯磨きを嫌がったり、前歯を使うことを避けてしまったりするこどももいます。そのため、揺れている乳歯がある場合は、早めに抜歯することをおすすめします。
抜歯後、永久歯は舌の動きで自然に前方へ移動することもありますが、位置が改善しない場合には小児矯正をご提案する場合もあります。
お問い合わせ
CONTACT
お口のお悩みやお子さまのお口で気になることがあれば、
東急東横線「祐天寺駅」東口2改札から歩いて1分の場所にある
「こどもの歯科」にご相談ください。
